2025年09月17日
板倉建築の課題!【オカの板倉奮闘記2】
丹陽社は板倉造りを中心としてお客様の健康を考えた健康住宅を建てている設計事務所です。
一級建築士で当社の代表であるオカが、いかにして板倉造りと出会い、建てるようになったのか。
そこに至る経験を3回に分けてお送りします。
第2回は初めて触れた板倉造りから受けた衝撃。本物の持つ香り、存在感。そして板倉造りを実現するためのハードルの高さを知るまでです。
Contents
伝統木造研究会
「伝統木造研究会」にはいりまして、いろいろ教えていただいていたのですが、
実際に板倉造りの建物を見なければどうしようもありません。
筑波に行って安藤先生の建てた板倉の家を紹介していただき、見せていただこうかと思っていました。
そんな時、相模原で板倉造りの家の現場見学会をするというファックスが舞い込みました。
会員の岐阜の設計事務所が静岡の工務店と神奈川の相模原で建築をしていて現場見学会をするというのです。
「へぇー、結構離れた地域の設計事務所や工務店が集まり協力して、板倉造りの家 をつくっているのだなぁ。」
ちょっとしたカルチャーショックでした。
建築、とくに住宅建築は地場産業で、遠くの地域の仕事をすることはあまり無いからです。
さっそく見学に行くことにしました。
ようやく現物の「板倉造り」が見れると期待に胸がふくらんだんです。。
2004年の12月、師走には珍しく天気のよい暖かい日でした。
新幹線の車窓から見える富士山が本当にきれいだったのを覚えています。
新幹線より在来線に乗り継ぎし、探し回って出合った「板倉造り」は本当に杉の無垢材の存在感のある建物でした。
外観は、他の建物とそんなに変わらないのですが、中に入ると違います。
杉の木の香りと共に、柱、梁だけでなく床、天井までにつかわれた杉無垢材は自然素材が持つ本物を感じさせるのです。
そして、杉材が見せる木肌は、訪れる人をなつかしい気分にさせてくれます。
お会いした静岡の工務店のN社長は親切な方で、同業者であるにもかかわらず現場で本当に丁寧に、板倉造りの構造について教えていただきました。
そして、岐阜の設計事務所のKさんとお会いし、お話をさせていただきました。
Kさんは、板倉造りを習得するために自分の家を板倉造りの家に建替えたのです。
Kさんは私にはっきり言われました。
「自分で、経験しないとわからないよ。
無垢材と格闘して、天気と格闘して、そして大工さんと格闘しないと、図面はかけないし、板倉造りはできないよ。」
そのとおりなんです。
具体的な計画があって設計し施工しないと、本当のところはつかめないんです。
はじめてみた、杉無垢材でできた板倉の家の存在感の感動ともやもやした気分を持って新幹線に乗り、ひとり缶ビールをのみながら大阪に帰りました。
板倉造りの課題①
神奈川の板倉造りの現場見学会で知り合った
設計事務所のKさんに、板倉造りの設計をするのには真剣に取り組まないとダメだよと指摘を受け悶々とした気持ちを抱え大阪に帰ってきたんです。
でも、岐阜のKさんも親切な方でした。
板倉の家の構造をもっと良く知れるようにと、京都で、自分が設計した板倉の家にお住まいのお客さまを紹介してくれました。
見学のためには、ちょうどいい建物だと段取りしてくれたのでした。
さっそく、在来の木造住宅を建てるときにいつもお世話になっている大工のYさんに連絡を取ったのです。
以前から板倉の家の特徴を話していましたので、話は早い。
もし、興味があるなら一緒に見学に行こうと誘いました。
実は、どうしても一緒に行ってほしかったのです。
大工さんの目に「板倉造り」がどう映るのか、
構造的に職人さんの目から見てどうなのか、
Yさんでも施工できるのかと。
Yさんは、お客さんの前では感心し、
興味深げにいろいろ質問をしていました。
でも、でもです。
帰りの車中では、先ほどまでの愛想の良かった態度とは打って変わり、不機嫌そうに、私に問題点をさかんに指摘してきました。
「今の木材の流通体系では、杉無垢材はなかなか見つけられないよ」
「市場でこれだけの無垢材を一度に買い付けはなかなか難しいと思うよ。」
「それに、無垢材は、自然素材だけにくるいが多いので、市場ではくるいの少ない外材と加工された集成材しか手に入らないよ。」
「もし、手に入ったとしてもその材が狂わないとは保障できないよ。」
「はじめの進め方さえわかれば、
木造一戸建てを手がけている大工さんなら
充分対応できると思うんだけどね。」
「でも、図面がしっかりしていないと、このような構法は時間がかかって仕方がない。」
「壁材を現場で寸法切りするような、手間のかかることはできないからね。」
私はYさんの強い口調の指摘に、
べっとりと冷や汗をかいたのを覚えています。
そうなんです。
私は、板倉造りの無垢の杉材は、材木屋さんに行けばすぐ手に入るものだと思っていたのです。
そこになくても、注文すればすぐ手配のつくものだと勘違いしていました。
・・・・・・・・・・・。
解決しなければならない課題はそれだけじゃあ無かったんです!
板倉造りの課題②
私は、板倉造りの無垢の杉材は、材木屋さんに行けばすぐ手に入るものだと思っていたのです。
そこになくても、注文すればすぐ手配のつくものだと勘違いしていました。
無垢材のくるいについてもそうです。
充分乾燥していればくるいは少ないということは知っていました。
だから、大工さんの下小屋に何ヶ月か格納しておけばと軽く考えていました。
でも、板倉造りの家は、普通の家の2倍から3倍の木材量を使うのです。
そんな迷惑なことは、大工さんには頼めないことに気がつきました。
一般的には、重油を燃やした窯の中に材木を入れる人工乾燥をします。
それでしたら、一週間ぐらいで柱や梁などの構造材は乾燥します。
人工乾燥は天然乾燥と違い、木材外部の割れは少ないのですが内部に割れが起きる可能性が高いのです。
また、色や艶に関しても人工乾燥は樹脂分などもとってしまうので天然乾燥と比べて劣るんです。
柱や梁桁などを天然乾燥させるとなると、1年から3年寝かせていなければなりません。
それでも、天然乾燥材を使いたいんです。
これらの条件を満たす材木を手配する材木やさんを探さなくてはなりません。
図面にしてもそうです。
大体はわかっていますが、今はまだ手探りです。
このような状態でお客さまにこちらから設計をさせてほしいとはいえません。
私を指名して、板倉造りで設計をしてと頼まれれば別ですが。
私は思いました。
「とりあえず図面を描けるようになろう。」
天然乾燥材の仕入先は、どこかにあるはずだから工務店のNさんか、設計事務所のKさんに教えてもらおう。
施工も具体的に仕事がきまれば、大工のYさんと一緒になり全力で取り組もうと自分に言い聞かせました。
そうして、岐阜の設計事務所のKさんの板倉造りの自宅を何回かおとずれました。
建物を改めて見せていただき、疑問点についていろいろ教えてもらいました。
東京や滋賀いろいろな場所で行われている講習にも積極的に参加したんです。
オカの板倉造り奮闘記3 につづく
「丹陽社モデルハウス見学会」
弊社所長オカが初めて建てた板倉造りである丹陽社のモデルハウスの見学会です。
板倉造りの家に住み続けてわかったこと、経年変化や木の家のお手入れのこと、なんでもお聞きいただけます。
家を建てるなんて考えてない……でも大丈夫です!
無理なセールスはいたしません。
板倉造りの家を見て、触れて、知ってください!